溶存酸素って何?
酸素に限らず水は接している気体を水中に取り込みます。その量は気体の種類、気圧、温度、接している気体に含まれる割合によって変わります。
気圧が高いほど多く、気温が低いほど多く溶けることができます。日常生活している環境だと、25℃の水1Lに酸素はだいたい8mgまで溶けることができます。
この値より多く水中にあると、水面から外へ放出されます。気泡となり水中で何かにくっついて存在する場合もありますが、いずれ放出されます。※溶存酸素が減った場合に、放出されずに再び溶解することも考えられます。
この値より低い場合には水面などの空気と触れ合っている面で酸素は水中に取り込まれます。しかし、この場合に飽和状態を超えることはありません。さらに、水に溶けた酸素の拡散速度は遅いので、静水状態だと水面付近の酸素濃度が高くなり、取り込み量が少なくなります。
効率よく酸素を取り込み、溶存酸素を飽和状態に保つ
水槽内の溶存酸素は主に水面から取り込まれたものです。先に述べたように静水状態だと水面付近の酸素濃度が高くなるため取り込みが少なくなります。これを回避するために、水槽内の高酸素濃度の水と低酸素濃度の水を循環させる必要があります。
水槽内で水が対流すれば良いわけですから、ろ過器やエアレーションなどで底の水を上に持ち上げればよいのです。さらに、水を動かすことで水面が波打ち、表面積が大きくなります。つまり、空気が触れ合う面が多くなるので酸素を取り込む効率もUPします。ただし、水が空気と接している面で飽和量以上に酸素を取り込むことはありません。
溶存酸素が飽和状態を超える
普通の状態で溶存酸素が飽和量を超えることはありません。だってそれが飽和だから。しかし、溶存酸素が飽和状態の水中に穏やかに酸素を注入すると一時的に酸素が水中に滞在することは考えられます。あくまでも一時的にです。やはり、飽和量を超えている分はいずれ水の外へ放出します。
穏やかにとはどういう事か。例えば水草の光合成。光合成をしている状態の水草は気孔から酸素を放出しています。これは、溶存酸素が飽和していても出ています。出された酸素は溶存酸素が飽和状態でなければ溶け込み溶存酸素になります。溶存酸素が飽和状態ならゆっくりと水面に向かい放出されます。
この状態は溶存酸素が飽和状態を超えていると言えると思います。しかし、光合成が盛んな場合、近くの酸素同士がくっつき気泡が大きくなります。そうなると浮力が大きくなり一気に水面に到達し放出されます。
エアレーションの効果と逆効果
エアレーションに関しては、「エアレーションが溶存酸素を増やす」「エアレーション自体は溶存酸素は増やさないが水槽内の対流や水面の揺らぎを作るのに役立つ」という2つの意見を良く目にします。さらに、エアレーションの気泡は「大きい方が効果的」「小さい方が効果的」の2つの意見があります。さて、どれが答えなのでしょうか。
エアレーションが溶存酸素を増やすか増やさないかについて
溶存酸素を増やすのに必要なことは飽和量に達していない水を空気に触れさせることです。ですから、エアレーションで出た気泡が空気と触れ合う事は効果的です。さらに対流や水面の揺らぎを作るので効果は高くなります。でも、飽和状態を超えることはありません。飽和状態に早く近づける効果は高いと思います。
「エアレーションが溶存酸素を増やす」という表現は水中の酸素濃度がすごく高くなることも期待できる誤解を招く恐れがあります。実際に誤解をしている人もいると思います。酸欠状態を早く解決すのには役立ちます。でも飽和状態は超えません。
エアレーションの気泡の大きさは小さい方が表面積が増えます。気泡が大きい方が対流や水面の揺らぎは大きいです。飽和状態に早く近づけるのなら気泡が大きい方が効果が高いと思います。激しく水中に放出された気泡は水中に留まらずにすぐに水面に向かい放出されます。微細バブルの小さな気泡も良くて十数秒です。
エアレーションをして成功している人、エアレーションをしても上手くいかない人、エアレーションをしなくても成功している人、エアレーションをしないで上手くいかない人、色々いますよね。水槽の状態は千差万別です。エアレーションが必要かどうかは水槽によって変わります。
エアレーションの逆効果
炭酸水は高い圧力をかけて二酸化炭素を溶解させています。高い気圧だと飽和量が増えるのでたくさん溶解できるのです。ふたを開けると気圧が下がり飽和量が減り、溶けきれなくなった二酸化炭素が放出しシュワシュワします。さらに、かき混ぜると放出が早まり激しくシュワシュワしますよね。
水草がたくさん入っている水槽の場合、日中の光合成で溶存酸素が飽和量を超える状態が一時的に起こっているかもしれません。飽和量を超えた酸素はゆっくりと素面に向い放出されます。エアレーションはこの速度を早めます。内部で激しく攪拌するからです。炭酸水をかき混ぜた時と同じです。溶存酸素は常に飽和量に近づくように変動します。
つまり、溶存酸素を増やそうと思ってエアレーションした結果、逆効果になることもあるのです。
水道水の溶存酸素
水道水は圧力をかけて送られてきます。ですから通常よりも溶存酸素が多い状態になっています。蛇口から出してしまえばほぼ1気圧なので飽和量を超える分は外へ放出されますが、少し時間がかかります。
コップに水を汲んでしばらく放置しておくとコップの縁に気泡がつくことがありますよね?あれがそうです。他の気体も溶けているので、成分は酸素だけではありませんが…。
この事を考慮して換水の水を用意すれば、一時的に溶存酸素を飽和状態以上にできるでしょう。しかし、換水の時に水道水をそのまま入れる人はあまりいませんよね?だいたいはカルキを抜いたり、温度を合わせたりするはずです。汲み置きの水を使う人も多いのではないでしょうか。
汲み置きする事で余分に溶けていた酸素は放出されてしまいます。なんだか勿体無い気がします。
まとめ
水槽の大きさ、飼育個体数、水草の量、濾過システム 等々により溶存酸素量は変わります。エアレーションが必要かどうかもそれぞれです。エアレーションがなくても十分な水槽もあれば、エアレーションが効果的な水槽もあります。自分の飼育環境を見極める事が必要です。
あっ、そういえば、水草も呼吸をするって事もお忘れなく。
エアレーションについて考察したこの記事もどうぞ。